未来解剖
SANKENが描く、未来予想図 VOL.1「ZEB」前編

2013年、「つくばみらい技術センター」で国内初の全館「ZEB」化を達成。
当時から「ZEB」の開発に携わってきた佐藤英樹氏が
「ZEB」をキーにして広がる設備施工の未来像について語ります!
VOL.1「ZEB」前編 〜次のステージで「ZEB」を活用するために〜
「ZEB」が可能にする次の役割/三建設備工業が蓄積してきたノウハウを生成AIに活用/常に未来を見据えた開発者の視点と思考
「ZEB」は省エネという役割から、次のステージへ
技術的な進化はもちろんですが、世間の認知度という点でも当初とはまったく異なっています。当時は、建築業界の人間だけが知っているという感じで、クライアントも「ZEBってなんだ?」と、あまりピンときていませんでした。でも今では、当社にインターンで来る学生も「ZEB」を理解していることを知ると、「広く認知されるようになったなあ」と実感する場面が増えてきました。
また、そうした認知の広がりとも関連していますが、今や省エネルギー化はあたりまえという認識の中、「ZEB」の役割は次のステージへと進みつつあります。その一例として「レジリエンス強化*」が挙げられます。「ZEB」には、“エネルギーを自分で作って使う”という特徴があり、太陽光発電等の創エネ設備を導入していれば災害時に社会インフラが停止していても、建物内は稼働することができます。
企業としても、災害時にどのように事業を継続していくかは常に考えるべき課題だと思うので、自立した建物を実現するZEBは「レジリエンス強化」にもマッチしていると思います。
*レジリエンス強化:災害や停電が起きたときにも建物の機能を保つ力のこと。非常時にも暮らせる・働ける強さなど
各社の強みが反映され、差別化が顕著になる「設備の生成AI」
設備分野でのAIの活用は、スマートビル化の加速も含めて遠い未来の話ではないと思っています。そこで、AIを活用するためにどのようなデータやノウハウを学習させられるかが、重要なポイントになります。それぞれの企業には得意分野があり、それらを学習させると考えた場合、「ZEB」に関するデータは画一的なものではなく、各社独自のデータによって構成されるAIになるはずです。
私たちであれば、運用面についての膨大なデータがありますので、運用まで見据えたAIが可能になると考えています。「ZEB」は設置後にどう動いているかなど、運用・管理が大切です。設計通りに動いているか、もしうまく運用できていない場合は、どのように改善すれば良いのか…数々の施工実績から得たノウハウを学習させることで、私たちならではの提案や運営ができると考えています。
さらに、再生可能エネルギーを利用する「ZEB」の分野で、先頭を走ってきたという自負があります。AIを活用する場合も、『三建設備工業オリジナル』の実現を目指していきたいです。
開発には欠かせない思考は、“十歩先の未来”を見据えること
これからカーボンニュートラルの達成に向けて、近い未来には水素のような次世代のエネルギー資源が生まれてくると思います。それらの新しいエネルギー資源が生まれてからその活用方法を検討するのではなく、想定されるエネルギー資源をどのように活用できるか、またはどのように活用していくかを今の段階で検討していく必要があります。
私たちが2013年に「ZEB」に取り組んだときも同じでしたが、プロフェッショナルとして、一歩・二歩先ではなく、遠いけど背中が見える“十歩先の未来”を見据え行動していくことが開発には欠かせません。目の前にある課題を解決することはもちろん、未来への架け橋となる技術を常に念頭に置き、日々の業務に取り組んでいます。